錦秀会・阪和記念病院の北風政史医師が行った「メタボリック症候群とすい臓がんとの関係に関する臨床研究」がThe Lancetの姉妹紙であるeClinicalMedicineに掲載されました

「メタボリック症候群とすい臓がんとの関係に関する臨床研究」(Metabolic Syndrome is Linked to the Incidence of Pancreatic Cancer

というタイトルの論文が2023年12月12日、The Lancetの姉妹紙であるeClinicalMedicine(IF:17.033、H-Index:63)にonline掲載されました。

この研究は、錦秀会・阪和記念病院の北風政史医師が、大阪大学医学系研究科、国立循環器病研究センター、大阪難病財団などの研究者と遂行しました。本研究により、メタボリック症候群(いわゆるメタボ)が すい臓がんの発症要因になる可能性が明らかとなりました。本研究の成果は、すい臓がんの予防戦略を考える上で貴重な根拠のひとつとなると考えられ、大きく臨床医学に貢献するものと期待されます。

背景:

がんは早期発見や画期的な画像診断技術やバイオマーカーを用いた迅速な診断、また革新的な医療や外科治療の進歩によって徐々に克服されつつあります。しかしながら、膵臓がんは特別で、現在でもその発生率と死亡率がほぼ同等であり、

最も致命的ながんの一つとして認識されています。実際にアメリカでは、膵臓がんはがん死亡の第4位であり、日本では第5位です。すい臓がんは、治療とともに予防が特に大切となりますが、残念ながらすい臓がんのリスク因子については十分な検討はなされてきませんでした。以前より、メタボリック症候群が膵臓がんの原因の一つであることが示唆されてきましたが、メタボリック症候群の早期段階が膵臓がんの発症増加と関連しているかについては明らかではありませんでした。そこで、JMDCより460万人の医療ビッグデータの提供を受け、メタボリック症候群と膵臓がんの関連性を後ろ向き観察研究で検討しました。

 

結果:

2005年から集積された約460万人のデータをもとに、メタボリック症候群の有無に関わらずそれらの集団をフォローアップし、膵臓がんの発生率を調査しました。登録前に膵臓がんのない270万7296人の被験者を対象に、平均40.7ヶ月のフォローアップ期間中、87,857人が膵臓がんにり患しましたが、メタボリック症候群グループの331,229人中16,154人(4.9%)、非メタボリック症候群グループの2,376,067人中71,703人(3.0%)が膵臓がんに罹患しました(ハザード比(HR)1.37、95%信頼区間[CI] 1.34〜1.39、p <0.0001、年齢、喫煙、性別で調整後)。さらにメタボリック症候群の構成要因が1つから5つに増えるにつれて、膵臓がんの発生率も対応して増加しました(HR:1.11、1.23、1.42、1.66、および2.03、Cox比例ハザードモデルを使用、それぞれp <0.0001)。

さらに、予備代謝症候群と膵臓がんの関連性も明らかとなりました。 このことより、

メタボリック症候群は早期・軽症であってもがすい臓がんの大きなリスクとなることから、すい臓がんの予防にはメタボリック症候群の治療と予防が重要であることが示されました。

展望:

本試験の結果より、メタボリック症候群は早期・軽症であってもがすい臓がんの大きなリスクとなることから、すい臓がんの予防にはメタボリック症候群の治療と予防が重要であることが示されました。今後、すい臓がんの予防と治療のみならずその発がん機構の基礎研究に大きな影響を与えるものと期待されます。

論文はこちらをご参照ください 

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